Story

ストーリー

自らの過ちにより、家族も仕事もすべてを失った俳優・黒田誠一。
胃がんを告知され、もう失うものは何もないと知ったとき、彼はただ北へ向かって歩き出した。
手の中には、高校時代に初恋の少女・赤松美咲からもらった一枚の古びた切符——
銀河鉄道のジョバンニの、「どこまでも行ける」切符だけが残っていた。

夜の山道で偶然出会ったのは、UFOを探して全国を放浪するひとり者の男・宇野光太郎。
まるで噛み合わない二人は、奇妙な成り行きで同じバンに乗り込むことになる。

やがて旅には、どこからともなく現れた不思議な若い女・ペコが加わる。
何も持たず、屈託なく笑うペコの存在が、二人の間に静かに何かを溶かしていく。
それぞれに傷を抱え、それぞれに何かを信じようとしながら、
オンボロのバンは北へ北へと走り続ける。そして旅の果てに、二人は——。

登場人物

黒田誠一(58)

大学時代に劇団を立ち上げ人気を博すも、酒による失敗と傲慢な態度で転落。準主役のチャンスを二日酔いで台無しにし、事務所解雇。8年前に離婚、娘とは絶縁。現在は小さな事務所で名もなき端役を演じ、アルバイトで生計を立てる落ちぶれた俳優。
進行性胃がんを宣告され、孤独死への恐怖から、40年前の初恋の相手・美咲との再会に最後の希望を求める。しかし「惨めな自分を見せる恐怖」から、あえてローカル線を乗り継ぐ遠回りな旅を選ぶ。
それは美咲探しという名の逃避行だった。

宇野光太郎(45)

元大手IT企業のシステムエンジニア。現在は自称「未確認飛行物体研究家」として、愛車の中古バン「アルゴ」で日本各地を巡りUFO観測を続けている。
システム障害の報告書を改ざんされた経験から、真実がねじ曲げられる社会に失望し、突然退職。科学の枠組みから外れた「目に見えないもの」を信じたいと、子どもの頃に夢中になったUFO観測に情熱を注ぐ。孤独を受け入れているように見えて、どこかで誰かを待っている。
黒田誠一との出会いにより、閉ざしていた心に変化の兆しが芽生える。